予防という概念があまりなかった時代、歯科医院で行われていた治療は「歯を削る」、「歯を抜く」というものが主なものでした。つまり我々としては治療をすればするだけ、患者様の歯が無くなっていってしまうというジレンマを抱えていました。
IM’s Dental Clinicでは、「患者様がご自身の歯で楽しくお食事をする事ができ、健康な口腔内を維持する事で全身の健康に繋げていく」という事を一番の目的と考えています。そのために「治療」以上に「予防・メンテナンス」を重視しています。
治療が終了した患者様に予防・メンテナンスの重要性をご説明させて頂き、虫歯や歯周病が原因でこれ以上歯を削ったり、抜いたりする事がない様にする事で、患者様に更なる幸せな生活を送って頂く事を目指しています。
虫歯予防
虫歯を予防するためには主に以下の3つが重要と言われています。
- 口腔内の虫歯菌の数を減らす。
- フッ素などを使用して再石灰化を促進する。
- 口腔内が酸性状態の時間を短くする。
虫歯は口腔内の虫歯菌(ミュータンス菌など)が糖分を栄養として繁殖し、その代謝物として酸を産生する事で歯が溶けて発症します。
口腔内の清掃状態が悪く、虫歯菌が増えたり、糖分を多く口にして、口腔内が酸性になる時間が長くなるとと虫歯のリスクは上がっていきます。
1 口腔内の虫歯菌の数を減らす
口腔内の虫歯菌の数を減らすためには、まず何よりも大事なのは歯磨きです。歯磨きによって歯の表面に付着しているプラークを取り除き、産生される酸の総量を少なくします。
よく患者様から「歯磨きができない時にマウスウォッシュだけでは虫歯予防に意味がないのか。」といった質問を受けます。虫歯の原因のプラークは歯の表面に強固に付着しているため、ブラシでこすり取る事が重要です。ブラッシングで歯の表面から剥がれた虫歯菌に対して、殺菌効果のあるマウスウォッシュを使うことは効果がありますが、マウスウォッシュ単体では虫歯予防効果は低いと言えます。
歯磨きで全てのプラークを常に取り除き切るのは不可能です。必ず磨き残しがあるため、定期的に歯科医院で専門的な器具を使い除去する事でさらに虫歯予防効果を上げる事ができます。
3DS除菌療法
虫歯菌の数を減らすために「3DS除菌療法」という方法もあります。
この方法のためにまず、患者様専用のマウスピースを作成します。そして、歯科医院で歯面を徹底的に清掃した後に、マウスピースに薬剤を入れたものを歯に装着し、薬剤を作用させる事で口腔内の虫歯菌の数を減らしていきます。
この除菌療法は、虫歯のリスクが高い方や、更に虫歯予防に対する意識の高い方などにお勧めしています。費用は33,000円(税込)です。
2 フッ素などで再石灰化を促進する
虫歯菌が産生する酸によって歯が溶けていく事を「脱灰」と言いますが、歯が唾液などからミネラルを補給して、脱灰で溶けた歯質を補修する事を「再石灰化」と呼びます。
食事のたびに脱灰と再石灰化が双方せめぎ合い、脱灰のスピードに再石灰化が追いつかなくなると、歯に穴ができ虫歯が発症してしまいます。
歯の再石灰化を促進するのに有効なのがフッ素です。フッ素は歯質を強化し、酸に溶けにくくし、また再石灰化を促進します。フッ素による主な虫歯予防法は、フッ素配合歯磨剤の使用、フッ素ジェル塗布、フッ素洗口剤の使用の3つがあります。
フッ素配合歯磨剤の使用
フッ素が配合されている歯磨剤を使用することで、最も世界で利用人口が多い虫歯予防法です。日本ではフッ素濃度が1500ppm以下に定められていて、大人向けに1450ppm、950ppmの製品が、子供向けには500ppm、100ppmの濃度の製品が多く販売されています。
虫歯予防効果は歯磨剤に含まれているフッ素の濃度が高いほど高くなり、1000ppm以上の濃度では500ppm上がるごとに予防効果が6%上昇すると言われています。
年齢によって使用する歯磨剤の適正量は、厚生労働省の健康情報サイト「e-ヘルスネット」にある以下の表にある通りですので、この使用料、使用方法を参考に歯磨きをする事をお勧めします。
またフッ素配合歯磨剤の使用だけではなく、以下に紹介するフッ素予防法を併用する事で虫歯予防効果が更に上がります。
フッ素ジェル歯面塗布
歯科医院で高濃度(9000ppm)のフッ素ジェルを歯面に塗布することで更に虫歯予防効果が上がります。フッ素ジェルの塗布方法は患者様の年齢により変わります(綿球塗布法、トレー法など)。
歯科医院におけるフッ素歯面塗布による虫歯予防法は年に2回以上、継続的に受けることで効果を発揮します。
フッ化物洗口
フッ素溶液を用いて1分間ブクブクうがいをする方法で、永久歯の虫歯予防手段として有効と言われています。幼稚園や保育園で集団実施されていたり、個人的に家庭で行う事もできます。集団実施の場合は週1回または5回の場合が多く、家庭で行う場合は毎日実施する事が多いです。それぞれ使用するフッ素濃度が異なります。
5、6歳の第一大臼歯の萌出時期に合わせて開始し、継続利用する事が虫歯予防効果を確実にすると言われており、また成人の虫歯に対しても高い予防効果が認められています。
※佐賀県は12歳児の虫歯の数が全国平均よりも上回っていましたが、県内全ての公立小学校で集団フッ素洗口を実施するようになり、現在では全国の中で子供の虫歯が少ない県の一つとなりました。
3 口腔内が酸性状態の時間を短くする。
食事をすると虫歯菌が産生する酸によって口腔内は酸性状態になります。その酸性度がph55.5以下になると歯が溶け出します(脱灰)。そして唾液の力によって口腔内が中性状態に戻り、脱灰された歯質が補修されます(再石灰化)。
食事の度に口腔内は酸性になったり中性に戻ったりを繰り返し、そして脱灰と再石灰化を繰り返します。
図のように間食が多いと、口腔内が酸性になる時間が増えてしまうため、再石灰化が追いつかず脱灰が進み虫歯が発症します。
よって歯磨きやフッ素だけでなく、食習慣も虫歯予防にとって非常に需要で、規則正しく、食事の時間と回数を守るようにしましょう。
虫歯治療で歯を削ってしまうと元に戻す事はできません。また、治療して修復物を装着したとしても、その修復物が一生もつ物はありません。数年おきに治療を繰り返して、どんどん歯を少なくしてしまう事がないよう、予防のため歯科医院での定期的なメンテンスをお勧めします。